【感想が難しい傑作】82年生まれ、キム・ジヨン/チョ・ナムジュ

【感想が難しい傑作】82年生まれ、キム・ジヨン/チョ・ナムジュ

【本】82年生まれ、キム・ジヨン/チョ・ナムジュ

こちらは少し前に韓国でも社会問題?になったというか、とても話題になった作品だ。ストーリーは簡単に以下の感じ。

主人公である『キム・ジヨン』氏が、日常生活の中でふと多重人格のような症状を出し始める。結婚し子育てをしているジヨン氏がなぜそのような症状となったのか、カウンセリングを受ける中で浮き彫りになってきた女性特有の人生模様をカルテ形式で羅列していくなかで、この社会を構成するジェンダー問題がありありと見えてくるストーリー。

↑これは私の解釈なので、人によっては捉え方違うかも。しかし、おそらくこんな感じで筆者の伝えたいことはまとまるのではないかな。いや、しかしここには複雑な情緒が含まれます、私。

舞台は韓国なのであるが、日本にもボッツリ当てはまることが多く、私自身もとても辛辣な思いになった。えっと、まずこの【82年生まれ】というのが本当にドンピシャな表現なのである。私は【89年生まれ】なので、この82年生まれの後輩にあたるが、後輩には後輩の視点できちんとその情景が捉えられるようにできている。さらに、おそらく母世代【60年代生まれ】【70年代生まれ】の人が読んでも、親側の気持ちや過去の文化、昔ながらの暮らし描写において痛いほど自身の生き様に重なる部分が多いと思う。この生まれ年代がきちんと表記されていることが、この小説を読むうえで非常に大事なキーワードだと思う。

で、重要なことなので先にお伝えをしておくが私は『フェミニズム』というものに対してちょっとだけ微妙な立場である。もちろん男女が対等な立場で権利行使できることが最も適正であり、それら社会運動には大いに賛同する。が、しかし【男女の性差を無視してはいけない】と強く思っている。

特に昨今では大手企業の採用において、エントリーシートから【性別】欄を無くしているというニュースを目にする。私はこれが非常に疑問である。男女による性差は人間によらず生物すべてが持っているものであり、大事なのは『男女の性差別をしないこと』ではなく『男女の性差を認めたうえで対等な評価を下すこと』なのである。その仕組みづくりが何よりも大切なのである。が、実世界はここが抜け落ちているような気がしていて、男女平等を謳っている取り組みに疑問が残ることが多々ある。

これについては議論の余地ありですのでココでは多くを語りませんが、取り急ぎ上記私の立場を明らかにしておきます。

そこでこの本の話に入りますと、この本を読めば『女性として生きることの当たり前な生活が女性特有の生きづらさに直結しており、それに多くの人(女性含む)が気づいていない』ということを痛いほど明確に提示してくるようになっている。この点について、よくぞ明文化してくださったとしか言いようのない筆者への敬服の念がたっぷりなのだが、それは読むのが辛い部分も多くございます。

女性という性で生きてきた人たち(私含む)が無意識下に経た経験が、実は「女性特有」である事実にこの本を読んでやっと気づき、気づくと鳥肌が立つような気持ち悪さに襲われ、自身が疑問すら思っていなかった常識が目線を変えれば「差別」であるということを実感せざるを得ないストーリーが展開されていく。この小説に起承転結はない。

改めて言っておくが、私は『女性だから』という被害者意識に立ちたくない。理由は、男も女もそれぞれメリット・デメリットがあるからである。女性だから大変、ということはなく、男性特有の大変さもあるし、女性だからこそ得られたメリットもたくさんあるので、女性という性を理由に立場の弱さを主張したいとは思っていない。

しかし、この本を読むと自然と女性としての被害者意識が助長されるように思う。ああ、大変だったよな、私、えらいよな、そんな風に思うこともできる。この明らさまな不利状況でよく喰らい付いているわ、と褒め称えたくもなる。だからといって女性性を「被害者」のように捉えて権利主張をしたいとは思っていない。(ここは重ねて言っておく)

だが逐一意識をしてこなかった些細な日常から『女性として生きる苦しさ・生きづらさ』を見事なまでに描写してくださった作者さんへはやはり敬服しかない。この細かさをよく掬い上げてくださったなぁと思う。フェミニストの皆様が読んだら狂喜乱舞的な作品ではないかしら。(言い過ぎ?)

この本は色々なメディアでも取り上げられて、「男性も読むべき」とか話題にされているけど男性が読むにもそれを受け取る感受性というか受容体というかがあるのか若干疑問である私です。読んだところで「で?」ってなりそうで怖い。女性として生きるだけで自然とリスクを背負い、少ない選択肢の中で求められる役割を全うすることが疑う余地のない運命として私自身も含めこの世界を形作っているんだなぁと悉く痛感します。

ということで、とっても、おすすめ(おすすめなんかい)な本です!